第 1 章 / 全 7 章
壮大なる謎
西洋美術史上、最も多くの分析がなされてきた作品の世界へと足を踏み入れてみましょう。1656年、マドリード。スペインで最も権威ある宮廷画家、ディエゴ・ベラスケスは、国王フェリペ4世に仕えながら、ある大胆な試みに打って出ました。彼が描いたのは王族の肖像画そのものではなく、それを取り巻く空間でした。30年もの間、この宮殿の回廊を歩き続けてきた彼は、円熟期の絶頂において、自らが絵を描く姿を自画像として描き込んだのです。さて、彼は一体、誰を見つめているのでしょうか。